「今日は、しぃちゃんと約束があるんだ。だから、ごめん」

「え?約束って?」

「パン屋さんに行くんだ」



千秋くんは正直に話す。
そんな事、正直に話さなくてもいいのに。
そんな風に思う私はやっぱり性格が悪いんだろうか。



「パン屋さん?私もパン好き。一緒に行ってもいい?」



ほら。
どうにか一緒にいようとするに決まってる。



「それは・・・」

「ちーくん、パン好きなんだね。なにがおすすめなの?」


伊永さんは話を切り替え、すっかり自分も行く気になっている。
・・・こうなるんじゃないかって、考えないわけじゃなかった。

これまでの伊永さんの事を考えたらきっとそうなるんじゃないかって。



でも、もしかしたら千秋くんがちゃんと断ってくれるかもって。
千秋くん優しいし、そんなの無理って本当はわかってたのに。



「・・・しぃちゃん?」

「え・・・?」




千秋くんの視線が私に向けられる。
その千秋くんの顔がギョッと驚いたように変わった。