「ま、待って!パン屋探してるんじゃないの!?」



咄嗟にそう叫ぶと、駆け出そうとした久賀くんはピタッと動きを止めた。
やっぱ、そうだったんだ。



「私も、久賀くんに今日話したら食べたくなって今から行くところなの。案内するから一緒に行こう」

「・・・」



久賀くんの背中に呼びかけると、久賀くんはしばらくじっと立ちすくんでいた。
しばらくして、ようやく振り返るとギュッと唇を結んだままコクリと頷いた。



「うん。行こう」




なんか、可愛い。
そう思うのは、男の子に対してすごく失礼かな。


私が歩き出すと、久賀くんは静かに私についてくる。
拒まれないように私は黙ったままパン屋に向かった。




「ここ。なかなか知らないと隠れててわからないでしょ」




パン屋の前でそう教えると久賀くんはパン屋をキラキラした瞳で見上げた。
本当に、好きなんだな。