そのパン屋さんは、駅前の少し細い路地裏にある小さなパン屋さん。
路地裏にあって、大通りからは隠れている穴場スポット。

それなのに、お客さんはいつも多い、知る人ぞ知る美味しいパン屋さんなのだ。



学校からは駅の前を通り過ぎて向かうことになるんだけど・・・。




「あれ・・・」




キョロキョロと辺りを挙動不審に見て回りながら落ち着かない様子の久賀くんを見つけた。
鞄を両腕に抱えて、行ったり来たりしている。



なにしてるんだろう・・・。



でも、ここにいるってことは、久賀くんも帰宅部なんだ。




駅前・・・。




もしかして。
私が話したパン屋さん探してるとか?




「・・・久賀くん!」




咄嗟に呼びかけると、久賀くんはビクッと身体を震わせる。
振り返って私の姿を確認するとハッとしたように踵を返し駆け出そうとする。

私は慌てて久賀くんを追いかけた。