「あの、久賀くん・・・。ちょっと、いいかな」




女の子たちと教室を出ていく千秋くんを見送る。




「なんか・・・、なんか。なんかなんですけど!」

「おい、うるせぇぞ」




随分な言いぐさの柊二くんなんて知らない。
私は隣に座る亜衣に、同意を求める。



「千秋くんが喋りはじめて、なんか、こういうの増えてない!?」

「そうだね・・・。皆、千秋くんの良さに気付いたのかな?」

「良さって・・・」




亜衣は困ったように笑うと、ちらりと千秋くんが出ていった扉の方を見た。
今週に入ってもう2回目。
まだ水曜だと言うのに。

こうやってお昼休みに声をかけられて出ていってしまうのは。




「今まで、千秋くんに見向きもしなかったくせに!ちょっとかっこよくて、声が綺麗だってわかった途端の変わりようはなに?私なんて、それより前から千秋くんの良さわかってたし!」




納得いかない。