「去年一年みてきて、千秋くんの心はずっと内側に向いていてそれが外に向けられたことは一度もなくて。いつも俯いて所在なさげで、存在をひたすらに隠しているように見えました」
その通りだと思った。
もう、家族に心配をかけたくなかったし、迷惑をかけたくもなかった。
だから、目立たないように、なにも、起きないように。
身を顰めて、誰とも関わらないようにしてきた。
関わりたくもなかった。
人なんて、嫌いだ。
「でも、今年度担任になって様子を見ていると、見る見るうちに変わっていったんです。千秋くんの纏うオーラというか、雰囲気が」
「・・・」
「千秋くんの周りに人がいて。千秋くんは顔をあげ、彼らと関わろうとしている。それはとても大きな一歩を踏み出したんだと」
しぃちゃんたちとの出会いは、僕を変えた。
それは、先生から見てもそう思ったの?
「いくら大人が何かを訴えたとしても、結局心を動かしてくれるのは、同世代の同じ世界を見てくれる仲間なんです。千秋くんは、自分の手でそれを掴んだ。だから、もう僕は何も心配はしていません」
「先生・・・」
お母さんが、涙ぐんでいる。


