「ね、久賀くんって、しぃちゃんの事好きでしょ?」




放課後になって、榎並さんと二人になる機会があると、いたずらっ子な笑みを浮かべて榎並さんが言った。
僕は目を見開き、きっと顔は真っ赤だろう。




「しぃちゃん、いい子だよね。私ね、すごく人見知りで、人付き合いとかすごく苦手なんだ。自分の想いとかはっきり言うのとか、苦手だし」

『僕も』



鞄の中から取り出したノートにそう書いて見せた。
榎並さんはそれを見てにっこりと笑うと、再び話し始めた。



「でもしぃちゃんは、私と一緒にいてくれる。しぃちゃんは、人を寄せ付けるオーラみたいなのがあるんだ。だから、しぃちゃんの周りには人が絶えない。あの、狂犬の芹川くんだって手なずけちゃったしね」

『それは、本当にすごいなって思った』



正直にそう答えた。
怯まず、怯えず堂々と話しかけていたしぃちゃんの姿は、忘れられない。




「でも、しぃちゃん人を寄せ付けるけど、あまり自分から関わっていこうとするタイプじゃないんだ、不思議と」