物思いついた時から私は狭い水槽をひたすら泳いでいました。光を求めひたすらヒレを動かすのですが私などでは決められた範囲を超えることなど出来ません。ましてや水槽から出て二本足で立つことも、水なしでは生きることすら出来ないのです。





「…ぅ、ゴホッ…!」



「大丈夫ですよ。落ち着いて深呼吸して」



息苦しさからか、ぼんやりと曖昧な意識の中、先生の低温の暖かい声が心地よく私の耳に入ります。ときどき呼吸を上手く出来なくなる発作は、いつもの事なので私は慌てたりはしません。それに私には先生という信頼出来る人がいるので恐れるものはないのです。



「頑張りましたね」



そう言って先生は笑ってくれたけど、実際頑張ったのは先生だとそっと心の中で返します。






「ねぇ、先生」


私は肩までかかった髪の毛を指先に絡めて弄びながら先生に尋ねました。




















「いつ私は死ぬの?」





「分かりません」

その後に、すみません、僕もまだまだ未熟でと続ける先生は嘘をつかない人ですが隠し事は得意なようです。




「私が死ぬ時は必ず側にいてくれる?」








「勿論。僕は医者ですからね」




優しいその言葉こそが残酷なのだと思う私は罪深いのでしょうか?けれどもいくら嘆いても先生の“好き”は私の“好き”とは違うのです。だって先生の私と同じ“好き”という気持ちは私ではなく他の誰かなのですから。