琉夏は、相談があると言いながら、いっこうに
相談しようとしない男だった。

ー仕事のこと?
ー体調はどう?
ーお父さんと仲良くやってる?

私こと、幼なじみに相談するくらいだ。
プライベートもからんでるのではないかと他にも質問を重ねるが、
どうもハッキリしない。


言いたくない、ききたくないけれども聞くしかない。

ー結婚の準備順調?

言ってしまえば何のこと、喉につまっていた何かが取れたようで爽快だった。

そうなんだ。
琉夏は、もう他の女性の旦那さんになってしまうのだ。


現実が悲しくて、でも泣くもんかとテーブルに目を落とした。


ぽんぽん

「?」

下を向いていた春香の頭を、琉夏の大きな手が優しく撫でる。


「犬じゃないよ」

泣き笑いになりそうだ。

「春香は、犬っころみたいでかわいいよ」



かわいい?

ちょっと今、何て言いました?
かわいいですってよ、私のこと。

絶賛、婚活中のわたしのことを、かわいいと。


「恋に落ちてしまうわ〜」

「落ちてるんだろ、お前」

ムカムカっ。


(知ってんのか!!私の気持ち。そりゃ、約束約束言ってればね)

思わず心の中でツッコミを入れてしまった。

「何でそういうこと言うのさ。
私頑張って婚活してるのに。
今日だって、相談があるっていうから心配していたのに、
全然相談してくれないじゃない!」


一気に言い切る春香を琉夏が見つめる。

予想外の発言を春香は聞いた。

「なぁ春香、俺、婚約破棄したんだ」


「は?」

(コンヤクハキ?)