何も起こらないうちから!?
話聞いてもらえる!?


「どうすりゃいいのよ…」



ブツブツ言いながら玄関の扉を開けた。
視界に入ってきた物を見つけ、またまた「げっ!」と顔が引きつる。




「ビーサン…」


あのヤンキーに借りた物。


「しまった。これ返すの忘れてた」


片方裸足だった私に無理矢理履かせたビーチサンダル。



「いいって言ったのに」


返さなくてもいいかなと思ってた。
知らん顔して捨てちゃえ!…って考えた。


(そんなことして恨まれたりしない?)


一瞬そんな思いが走った。
返せと言われるかもしれないから一応待とうと決めたんだ。


「じゃあ都合いいじゃん!ついでに返せば!」


またあの男に会うのか。
どうしてこんなことになる!?


「全部、郁也のせいよ!」


あいつが両天秤に掛けなければ良かったの。
向こうの子にも私にも、いい顔しようとしたから……




(違う……)


そもそもは私が男を見る目がなかったんだ。

郁也に付き合わない?と言われた時、軽そうな人だな…と思ったのに目を瞑った。


あそこで自分の勘を信じれば良かった。

そしたら、今のこの状況はない。



(全部、自分が蒔いたタネ……)



今度こそ間違いのない相手を見つけようとしたのにこれ。

でも、ビーサンは返しておきたい。


(手が切れるなら一度だけ我慢して会おう!それを最後に二度と連絡してこないよう言おう!)