(……私?…私があの人の逃げ場所になる?)


今、純香さんがした質問はつまり、そういうことなんだろうか。
私に轟さんを癒せるかって聞いてるんだろうか。


(……どうだろう)


自信を持ってあるとは言えない。
仕事でも何でも、私にはニガテなことがあり過ぎる。



「どうなのよ!?」


面と向かって聞かれた。
アガリ症が出たわけでも、吃って話せなくなったわけでもないのに声が出せない。



「何とか言えば!?」


言いたいよ。
できれば私だって声を大にして言いたい。


彼の気持ちを理解できる!って。
自信を持って、彼自身を癒してやれる!って。



(……でも、いつも反対だし……)


あの寿神社の祭り以来、常に癒されてきたのは私。
居てくれるだけでいいと轟さんは言ったけど、それで彼が癒されてるとは思えない。

いつも気を遣ってもらってるのはこっちで、今日だってきっと、気晴らしの為にここへ連れて来られたんだろうと思う。



やっぱり……向いてない気がする。


お姫様なんて向かない。

癒すよりも癒されてるもん、私……。






「ーーー帰る」


「えっ!?」


目を剥いて驚かれた。


「何で!?」


それを聞くの。
貴女が私に思い知らせてくれたんでしょ。


「大輔さんを癒す役目なんてできないから帰ります。…私には、そんな役目難しい……」