地面を濡らしながら振り向くと、ヤンキーみたいな男が目の前にいて。
「谷…口さん……」
髪の毛が逆立ってる。
おまけに今日はアロハシャツ。
サングラスを掛けた眼差しが固まって、私を凝視してる。
「…やっ!離して!」
振り解こうとしてもムリな話。
どうしてこんなに力が強いんだ。
「離してってば!」
あの日と同じことしないで。
「やだ!どこにも行かさねぇ!」
語尾を強めた男が引き寄せた。
胸の中に収められて暫くものが言えない。
「遅れてごめん」
頭の上から声が届いた。
「露店の手伝いが長引いて、なかなか抜け出せなかった」
遅くなった理由を言ってる。
「バカ……」
遅くなりそうなら言ってよ。
「ごめん」
何度も謝るな。
「ホタル」
(私はホタルじゃない!)
「ケイよ…」
「はっ?」
きちんと呼んで。
「私は蛍と書いてケイと読むの。一番最初にそう言ったでしょ!」
緩められた腕の中で顔を上げた。
サングラスの奥の瞳が、驚いたように丸くなってる。
「ケイはホタルみたいに光ったりしないの!ジミで平凡で……ありきたりなの!」
ぐいっと腕を伸ばして離れた。
残ってる涙の粒を手で払い落とし、彼の顔を見直した。
「今まで会ってた私はホンモノの私じゃないの!ホントの私は今あなたの目の前にいる!」
「谷…口さん……」
髪の毛が逆立ってる。
おまけに今日はアロハシャツ。
サングラスを掛けた眼差しが固まって、私を凝視してる。
「…やっ!離して!」
振り解こうとしてもムリな話。
どうしてこんなに力が強いんだ。
「離してってば!」
あの日と同じことしないで。
「やだ!どこにも行かさねぇ!」
語尾を強めた男が引き寄せた。
胸の中に収められて暫くものが言えない。
「遅れてごめん」
頭の上から声が届いた。
「露店の手伝いが長引いて、なかなか抜け出せなかった」
遅くなった理由を言ってる。
「バカ……」
遅くなりそうなら言ってよ。
「ごめん」
何度も謝るな。
「ホタル」
(私はホタルじゃない!)
「ケイよ…」
「はっ?」
きちんと呼んで。
「私は蛍と書いてケイと読むの。一番最初にそう言ったでしょ!」
緩められた腕の中で顔を上げた。
サングラスの奥の瞳が、驚いたように丸くなってる。
「ケイはホタルみたいに光ったりしないの!ジミで平凡で……ありきたりなの!」
ぐいっと腕を伸ばして離れた。
残ってる涙の粒を手で払い落とし、彼の顔を見直した。
「今まで会ってた私はホンモノの私じゃないの!ホントの私は今あなたの目の前にいる!」

