ただあの子になりたくて



音の波が一気に押し寄せる。

けれど私はそんなもの構わなかった。

きつく掴んだナイフの柄が、手の中でみしりと鳴く。

私は本当の自分に戻ったところで、家族がいる場所へ戻ることはできない。

仲間とまた楽しく遊ぶこともできない。

それが、自ら命を捨てた私の代償だ。

そんなこと、はなからわかっていた。

私と人魚姫は違うけれど、人魚姫は自分にできる最大のことをしてこの世を去ったのだ。

だから私は、今の私がすべきことをする。

私は下を向いたまま、ナイフを握りしめ、ステージの中央へ一歩一歩歩み寄る。