突然の宣告にカガミは息を飲む。動揺して言葉の出てこないカガミに反して、アキクニは悟ったように落ち着いた様子で席を立った。
 王の前まで歩み寄り、深々と頭を下げる。

「この身はあなた様とカガミ殿に救って頂いたもの。今日まで長らえさせて頂いた事に感謝いたします。この上は何なりとあなた様のご随にお取り計らい下さいませ」
「父上、アキクニ様はまだお身体が……」

 取りすがるカガミの言葉を制して、王はアキクニに小さな巾着袋を渡した。アキクニは受け取った袋を不思議そうに眺める。

「これは?」
「それには妙薬が入っておる。体力の回復に少しは役立つだろう。元々わしもそなたと同じ天上の神々によって地上を追われた身だ。わしは天上の通達に従うつもりはない。さりとて表だって天上に逆らってこの地までも追われるわけにはゆかぬ」
「心得ております」
「川を遡って行けば地上にたどり着く。無事に逃げ延びてくれ」
「お心遣い痛み入ります」

 もう一度頭を下げて、アキクニは部屋を出て行った。後を追うようにカガミも部屋を出ようとした。それを王が引き止める。

「どこへ行く?」
「わたくしの勤めを果たしに。途中まではアキクニ様とご一緒しようと思います」

 王はそれ以上何も言わず、カガミを見送った。