祐未のお通夜と告別式が年の瀬に行われた。

聖フローシアのクラスメイトも年末なのに殆どの子が集まって、
祐未の最期を見届けた。

同じように祐未とお別れするために集まったチーム仲間は、
Ansyalを悪者にして憎まずにはいられない祐未のお母様の想いから、
末席にも参列することは許されなかった。





どうして?
皆にも、ちゃんとお別れしてほしい。

祐未が大切にしてきた仲間なんだよ。




そんな風に心の中で思ってもやっぱり面と向かって、
祐未のお母さんに言葉にすることが出来なくて、
私はクラスメイトと一緒に末席へと並んで見届けた。


出棺の時間……。
クラクションと共に祐未の棺を乗せた霊柩車が目の前を通過していく。



すると紗雪が近づいてきて私の名を呼んだ。



「里桜奈、こっち。
 車で火葬場までどうぞって。
 うちの親の車に乗れるから……」


そう言って私をクラスメイトの輪から、少し離れた駐車場へと連れて行く。


そこには運転席と助手席に座った、紗雪のご両親が私を迎え入れてくれた。



「すいません。私までお邪魔させて頂いて」

「どうぞ」


促されるままに後部座席に、紗雪と乗り込むと火葬場を目指して車は走りだした。
バイパスを走り抜けた先にある少し遠い火葬場。


火葬場についた私たちは、祐未との最期のお別れをして旅立ちを見送った。


一通り、その場に存在して祐未を見送っているはずなのに
心が伴わない私は現実感が凄く薄くて……。


祐未が吸い込まれていった炉の扉をぼんやりと見つめ続ける。





「里桜奈……」


心配そうに覗き込む紗雪。
だけどそんな紗雪も、凄く疲れた表情を浮かべてた。


二人抱き合うようにしてお互い涙を流して炉を見つめ続けた。
心配して迎えに来た紗雪のお母さんが声をかけてくれるまで。




「紗雪、里桜奈ちゃん、少し温かい飲み物でも飲んで落ち着きなさい」


そう言って紗雪のお母さんはペットボトルの紅茶を手渡してくれた。
言われるままに、ギュっとペットボトルを両手で握りしめて一口飲み込む。


飲み物の温かさがゆっくりと体に染みわたった時、
ほんの少しだけ現実が近くなったような気がした。