虚を突かれたように、みんなが揃って息をのんだ。

 唐突に曝け出された自分の本心を前にして、動揺するその居心地の悪さは、あたしも知っている。

 でも、もう蓋を開けるべきなんだ。

 目の前にあるものから、いつまでも目を逸らし続けるわけにはいかないから。

「なに言ってるんだ翠? 責めるとか責めないとか、お父さんたちはそんな……」

「わかってる。どうにもできないつらいことや、悲しいことが起きたら、人は誰かを責めずにいられないんだよね? でもみんな、まず真っ先に自分を責めてしまうんだ」

「翠……」

「そして自分を責めることすら限界になっちゃったから、後はもう、お母さんを責めるしかなかったんでしょ?」

 お母さんの全身が、電流が走ったように大きくビクンと震えた。

 まるでお人形になってしまったように両頬を強張らせて青ざめたまま、指一本動かさずに立ち尽くしている。

 もしかしたら、息もできていないかもしれない。

 今までずっと苦しくて、つらくて、それでもなんとか日々をやり過ごしたくて、何事もない風を装ってニコニコ笑いながら、両腕で必死に蓋を押さえ続けてきたお母さん。

 その蓋が、いま開けられようとしている。全力で押さえつけている両腕が、限界を迎えてブルブルと震えている。

 ごめんお母さん、苦しいよね? でも、お願いだからどうか聞いて。

「それでもね、この目は、誰かに責められるべきものじゃないんだよ」

 身に振りかかってしまった不運。

 なんの落ち度もないのに断たれてしまう命。

 年と共に大切な物が、砂のように両手の隙間から零れ落ちていってしまうのを、人は止めることができない。

 ただ、指をくわえて見ているしかない。

 世界は、こんなにも理不尽だ。