「ううん。競技に参加はできないけど、応援はするよ」

「ふぅん。無理しないで休めば?」

「え?」

「応援って言えば聞こえはいいけど、気軽に楽しく騒ぎたいだけでしょ? 優勝目指して真剣に頑張ってる人だって多いのに、そんな遠足気分だと不愉快に思われるよ?」

「……」

「小田川さんは事情を抱えて大変なんでしょ? なら堂々と休めばいいじゃない」

 それは決して思い遣りから出た言葉ではなく、まったく逆のニュアンスが込められていることは明白だった。

「ちょっと、翠ちゃんが休むか休まないかは翠ちゃんが決めることでしょ? 口出しすることないじゃん」

 黙り込んだままのあたしを背中に庇いながら千恵美ちゃんが文句を言ったけれど、遠藤さんは意にも介さない。

「口出ししてるわけじゃないよ。これは親切心からの忠告」

「どこが親切!? 嫌味言ってるだけじゃん!」

「そう感じるなら、それは小田川さん自身に負い目があるせいじゃない? 移植手術患者なんて特別待遇されているけど、心臓移植みたいな大変な手術だったわけでもあるまいし」

 遠藤さんは胸を反らし、自信満々な態度で言い募る。

 たしかに、彼女は確信しているのだろう。

 なにを言ったとしても、あたしが決して言い返してこないことを。

「薄皮一枚、片目に縫い付けただけなのに重病患者気取っちゃってさ。小田川さん、自意識過剰って言葉知ってる?」