ヒーロー!?



廊下にもう人はいなかったため、その銃声はとても良く響いた。



血が飛び散っている。それはもちろん女の子の地だ。ギリギリで足を避けられたが、かすっていて、それなりに血は出ている。



やはり痛いようで、右足のかすったところの傷を抑えている。



そして、容赦なく俺は続けてもう片方の足に銃弾を撃ち込む。



今度はヒットして、球が足にのめり込んだ。



「ったぁぁぁ!!!」



今度は廊下に倒れ込み、銃弾を撃ち込まれた足を抑えている。



「クッソが…あぁぁぁぁぁぁぁ!!!クソガァ!!!ふざけやがって!!!!マジで撃ってんじゃねーよ!!!」



さっきの晴義みたいに喚き散らした。



だが、倒れた状態から起き上がり、どこから出したのかピンセットを手に持っていた。



そして、撃たれた足にのめり込んだ銃弾をそのピンセットで取り出した。



「ったい!いたいいたいぃ!もう、だからやなんだよ!銃弾とか持ち込んでんじゃねえよ!!!!」



まさか銃弾をピンセットで取り出すとは思っていなかったけれど、でも足はもう使えないだろう。



「俺はもうこれ以上撃たない。もうそんな足じゃ戦うこともできないだろ?諦めな」



「…っざけんじゃねぇよ。あー!もう!!こんな腐れ学校に来てこんなことしなきゃいけねぇのまじめんどくせぇぇ!!!」



また喚き散らしたかと思うと、一番上まで止めていたパーカーのチャックを一番下まで下げ、パーカーの内側から何かを取り出した。



それは、俺と同じ、拳銃だった。



俺に向けて、銃弾は容赦なく撃ち込まれた。…かと思ったが、何回も続けてバンバン目の前の女の子は打っているが、いずれも当たることなく、廊下の床や壁に当たって、ギリギリのところで銃弾は俺に当たっていない。



カチカチと音が鳴り、球がなくなると、女の子は「ふぅーっ」と息を吐いた。



「あぁ、もうやだなぁー…こんな無粋なの使っちゃったよ。ヤダヤダ」



すると、また内側に拳銃をしまった。そして、また内側に手を入れるとそこからはガーゼと包帯が出てきて、自分の両足の怪我したところをあっという間に応急処置してしまうと、足を怪我しているはずなのに、怪我していないかのようにその場にスクリと立って見せた。



ガーゼと包帯を拳銃と同じく内側のポケットにしまい、チャックを一番上まで上げると、フードをとった。



そこには、とても顔の整った女の子がいた。



黒い髪は漆黒で、赤い目は血のような色だな、少し赤黒い。ほんのり赤い唇は、口角がまだ上がっていた。



「メグルちゃん、ちょーっと悲しいなぁ…高倉静人くんがこんな無粋な真似に出るなんて、マジでぶっ殺したい」



そんなことを笑顔で言われても困る。というか、この女の子の異常な精神に驚いている。



痛いはずなのに、平然と立っていることがおかしい。俺なら絶対に立っていられない。
右足はまだかすっただけだから分かるが、左足といえばさっきまで銃弾がのめり込んでいたというのに、なんで立っていられるんだ。
しかも、笑って。



我慢して笑っているのかもしれないが、その可能性は低い。この顔は笑っているようで、俺のことを睨んでいる。
まさに、狂気的な笑みを俺自身にだけ向けている。



「武器使う人って大嫌いなんだよね。特に拳銃。物騒すぎるよ、本当。君が一番の危険人物だったよ」



最後の言葉が言い終わったあたりで、俺の前から女の子の姿が消えた。



正しく言えば、真正面から女の子が俺に向かってすごい速さで走ってくる。



拳銃を向けるが、撃つまでの時間がなかった。



拳銃の音が無機質に響き、だが、それはもう女の子に当たることはなく、壁にのめり込む。



俺はそんな銃弾の成り行きを見ながら、倒れていく。



見事に首に足がクリーンヒットした。しかも、人間の首のツボを的確について。



意識が薄れていく中で、彼女は俺に向けて言葉を放つ。



「よくもメグルちゃんにこんなことしてくれたね。メグルちゃんは君のボーのーーーーなーに…」



最後の方がよく聞こえない。でも、今はそんなこと関係ない。



ごめんな、龍也。俺、止められなかったわ。マジでごめん。



まさか、拳銃も効かねぇなんて思ってもみなかった。この女の子、やばい。



狂ってる。



静人side 〜end〜