ヒーロー!?



静人side



「何だ、これっ…」



その有り様は、とても酷かった。



酷い、と一言で表し切れるかは分からないけれど、とても残酷かつグロテクスだった。



「あれれ!ついに君も出てきたんだぁ!戦略派の高倉静人くん!」



まだ名乗ってもいないのに、名前を言い、しかも俺の戦い方を的確に言った。俺とこの子は初めて会ったはずなのに。



「君達のこと、何でもお見通しなんだよ!メグルちゃんは」



ビシッと俺のことを指差してにっこりと微笑んだ。微笑んだ、っと言ってもフードを被っているせいで口角を上げただけで不気味だったけれど。



「メグルちゃんと、遊んでくれる?」



ニタリと口角を上げたまま、言葉を言い放ったが、その声音には狂気的なものが含まれたように思う。



「…遊ぶよ。でも、その前に、ちょっとやり過ぎじゃないかな。だって、あまりけがを負わせすぎると、流石に訴えられるよ?
それに、君にも体力の限界があるはずだ。最初からそんなにスピードを飛ばして倒しても、あとでバテる」



「なになに、脅し?それとも、心配してくれてるの?でも、メグルちゃんはぜんっぜん大丈夫だよ?
そもそも、訴えられても、押さえこめる権力をメグルちゃんは持ってる。
それから、体力はこれでもかってほどあるから、ご心配なく、だよ?」



「今、降参したら流石に龍也も許すと思ってたんだけどね…。
まぁ、晴義を倒して時点でもう無理か。俺は、女の子を殴るのは趣味じゃないから、言葉で解決したかったんだけど…」



「もしかして、その言葉ってやつでメグルちゃんを止めようとしてたの?」



「いや、想定内だよ。断ると思ってた。だから…」



ズボンのポケットに入れていたあるものを取り出す。



「あは…はは?や、やだなぁ…ちょ、ちょっと物騒だよ?そこまで、することないんじゃないかなぁ?」



声だけだが、焦っているのがわかる。



でも、もうこれしか手がない。



少し怪我を負ってもらうことになるけれど、でも、この勝負に勝つためにはしょうがないことだ。



負けた時の彼女の条件はこの怪我に免じて許してあげようと、龍也に頼まなければ。



俺が今、女の子に向けて突き出しているものは、黒い塊…拳銃だ。



「もしかして、君のお父さんかお母さん、警察官?それとも、ヤクザ?」



「どっちでもないよ。一言で言えば金持ち。でも、この拳銃は闇市で買ったものだよ。もしもの時のためのね…。
でも、まさかこんなところで使うとは思ってなかったよ」



「い、いやいや。そ、そもそも撃ったことあるの!?」



「そりゃぁね。ちゃんと練習したよ。だから、狙ったところは撃てるよ」



「マジかぁー…」



「降参する?」



「…やだね」



「そっか…じゃぁ、ごめんね」



カチャリと銃鉄を起こし、引き金を引く。