龍也side
「龍也さん!た、体育館にいた奴ら、その近辺にいた者も全員倒されました!」
「南側も全滅!半分もの生徒がもうやられちまいました!」
報告しに来た不良二人はとても焦っている様子だ。走ってきたから…というよりも、あの女がゲームが始まって30分ぐらいで、あの女がそんなに大勢もの生徒を一人で全滅させたからだろう。
顔には出していないが、今の俺は感嘆の声さえも出てきそうなくらいに、驚いているし、感心もしている。
「報告ありがとう。お前達は元の持ち場につけ。それから、バラバラとしている者達に言っておけ。一塊になっておけと。30分で半分も倒せるやつだ…一人一人では流石に部が悪いだろう」
二人は同時に「分かりました!」というとすぐにこの教室から出て行った。
「驚きだね…こんな短時間で半分もの生徒を一人で倒すなんて」
静人がそう言うと、皐月が丁度調べ終わったのか、パソコンから目を離し俺たちの方を向いた。
「あのさ、女の子のことなんだけど…」
「どうかした?」
「…情報が、出てこないんだ。というより、もぬけの殻、って言った方が正しいかな。ロックは解除できたんだけど、どうやら…名前だけなんだ」
「偽名、か」
「どうやら、そうみたい…だね〜」
偽名を使う理由といえば、俺たちに負けた時に逃げる手段。だが、逃げるといっても俺たちに負ければあの女がいった通りのことを実行するつもりだ。あの女だってそれを承知の上での言動だろう。
他に偽名を使うとすれば、あの女は何か知られたくないことがあるか…いや、そうなのかもしれない。例えば…あの女の正体だ。何か隠さなければいけない事があるのだろう。
「…龍也。俺が行くよ」
さて、どうするかと悩んだいた矢先、そう言って立ち上がったのは、静人だった。
まさか静人がそう言うとは思ってもみなかった。晴義ならあり得ることだが、名前通り静かな静人はどんな時でも作戦を立てるだけで、自分からはあまり行動に移さない方だった。
「何か、考えがあるのか…」
「…うん。一様は」
「…そうか。なら、行ってこい。その代わり、あんま怪我すんなよ」
俺がそう言い終わると、静人は一瞬惚けた顔をしたが、にっこりと笑って「行ってくる」と言って教室を出て行った。
はぁ…。どこの青春漫画だっつーんだよ。だけど、マジで気をつけろよ、静人。あの女には何かあるんだ。危険な何かが。
龍也side end…

