ヒーロー!?




「ぅおらぁー!!!!調子こいてんじゃねぇぞクソあまぁ!!!そんな雑魚の中の雑魚倒していきがってんじゃねぇよ!!今からこの晴義様がテメェの相手してやろうじゃねぇかぁ!!!」



あの女の声にも負けないぐらい、というかそれ以上の大声で外に向かって怒鳴り散らした晴義は、静人達の止める声にも全く耳を傾けず、教室を出て行った。



「はぁーっ。バカよしのやつ、上手いこと挑発されやがって。
でも、あいつをマジで怒らせるなんてあの子も肝が据わってるなぁ。
怒ってる時は一番感情が出ていて隙が生まれやすいものだけど、晴義の場合はそうじゃないんだよなぁ。
晴義の隙をついて倒そうとしているのかは知らないけれど、あいつは感情的に戦ってる時が一番、強いから」




そんな長々とした説明をもちろんあの女に聞こえていたわけでもない。
だが、女はこちらに向いて、フードで隠されてはいるが、唯一隠されていない唇をあの時のように歪めて微笑んでいた。



まるで、俺達にそんなこと分かっているとでも言っているかのように。確かに聞こえていないはずの静人のその声は、あの女に聞こえていたというより、初めからこうなることを予想していた事なのだろうか。



ならば、あの女は自分の実力で晴義に勝とうとしている?あの女の両手には何もない。
もしかしたらポケットに何か小さな武器を隠し持っているかもしれない。
だが、そんなものでは晴義には勝てない。


もしかしたら、さっきまで使っていた何か他の武器があるのかもしれない。だが、女の辺りには何もなかった。



唯一落ちているものといえば…あの女が倒した雑魚の中の雑魚共と、その雑魚共の…血だ。