煙草と血の匂いが入り混じるこの学校では生徒が教師より上に立つ制度となっている。



殴られても蹴られても自業自得、自分が相手を挑発、または怒らせたから悪いのだ。あるいは気分で暴力を振るう者もいるが。



皆、この学校に入った生徒、教師になった者達は、文句の一つも言えない。上に立つ者以外は。上に立つ者ならば、下の者を支配できる。



そして、この学校にはゴロツキだけしか集まっていない。普通の者達などこの学校には存在しない。そのゴロツキ達の親だって同じだ。ここに入っている学校全生徒は親はいるのはいるが、見放された身の奴らばかりだ。



ここで生き延びていく…それは言い過ぎかもしれないが、学校生活を送る為には、力が必要なんだ。力が全てを左右し、これからを決めていく…。



学校がそんな制度になってしまったからには、しょうがないんだ。



まぁ、最初に暴動を始めたのは俺たちなのだけれど。俺たちが安定した学校生活を送れるように、この学校に革命を起こした。教師に支配されるのではなく、教師を支配するんだ。



「あぁ〜!暇だぁ!!」



急に声を荒げた王子顔なのに似合わない言葉を吐くこいつは佐藤晴義(さとう はるよし)。



「うるさい。バカよし」



的確かどうかは分からないが、ツッコミを入れた釣り目のイケメンは高倉 静人(たかくら しずと)。



「みーんなぁ、落ち着こ〜?」



落ち着きすぎてるというかふわふわした雰囲気を漂わせる童顔の男は那賀町泉(ながまち いずみ)。



「ふわふわいずみんは
可愛いなぁー」



この女たらしならぬ男たらしの眼鏡をかけたインテリ系そうなのにチャラ男なのは十零皐月(じゅうれい さつき)。



「お前らいい加減に静かにしろ」



そしてまとめ役兼リーダーの俺、相良龍也(さがら たつや)。顔は今紹介した奴らと同じくらいにいいのは確かだ。



話は変わるが、俺たちはここの頂点に君臨する者。俺が言った制度の通りでは、この学校で一番強い者と言っていいだろう。



だから、俺達に刃向かうものなどいないと言っても過言ではない。


…筈だったのだが、そんな日常を簡単に今日で壊されるとはまだ思わなかった。



〈ピンポンパンポーン♪♪〉



これがその始まりの合図だった事を俺達はまだ
知らない。



〈し、至急体育館に集まってく、下さいぃ!あ、集まらなかったひ、人は…た、退学です!〉



ブチッ



怯えながら噛みながらも言い終え、逃げるように放送を切ったのはこの学校の校長だ。



相変わらず俺達に怯えてるようなのは変わりないのだが…なぜ、逆らったのか。



理由も言わずに体育館に集まれなど意味が分からない。しかも、集まらなかった奴は全員退学。逆らった上に、無理矢理にも体育館に集めようとするのは何故だろうか。



「あぁ!?んだよあの糞野郎!」



「だから煩いってバカよし。でも、今回ばかりはそれに同感だな」



「校長先生の反抗期だねぇ〜…」



「もういずみんは例えが面白いなぁ〜。…で、どうすんの?龍也」



「………行こう」



俺の答えに教室内はどよめく。



だが、こいつらは分かってたみたいだ。こいつら、とは紹介した四人のこと。さすが俺の仲間達と言ったところだろうか。



俺を含める五人は立ち上がり、廊下に出る。俺たちが出てきた事に、教室内にいた者同様、廊下にいた者達も驚いている。だが、進む道には邪魔が入らない。



俺達が通るところは自然に道ができる。圧倒的な存在感を放っているか、それとも俺たちに逆らえば後でどうなるか目に見えているかのどちらかだろう。いや、後者の方がどちらかといえば正解か。