そんな幸せが崩れたのは、私が無事に大学生になり湊真が就職をしてから半年ほどが経った頃。

湊真は会社の方針で遠方への出張が多く、私も薬学部で勉強や実験、レポートにいっぱいいっぱいで、お互いに新生活に追われ、自然消滅に近い形で終わりを告げてしまった。

それからは、連絡を取り合うことも会うこともなく、いい思い出として記憶に刻まれていった。



別れから7年半。

湊真の就職先を知らなかった私は偶然にも湊真と同じ会社に就職していたらしく、今年の春、私がいるオフィスに湊真が転勤してきて、私たちは再会した。

……しかも、同じマンションに湊真が引っ越してくるという、嬉しくないオプション付きで。

あんなに好きだった人に再会して、心が乱されないわけがないんだ。

蘇りそうになる気持ちを止めるのは、湊真の薬指に光る指輪。

そして、7年半で変わってしまったらしい、湊真の性格や態度。

今の湊真は表向きの表情や態度は昔と変わらないのに、会社以外では何かにつけて大人げない意地悪な言葉ばかりを発してくる。

湊真と再会してから3ヶ月が経つけど、“性格がすっかり変わってしまった湊真のことが苦手”、という気持ちだけで私は立っていられるのだと思う。

湊真がそんな態度を取るのなら、私だって湊真に心を開くつもりはない。

……ただの同僚だと思えるようになるまでは、湊真にだけは私の心は絶対に見せない。



胸がちょっと苦しくなった気がして、余計なことを思い出しちゃったな、と私はテレビから流れてくる曲を聴きながら、ベッドの上で寝返りを打った。