龍の神に愛されて~龍神様が溺愛するのは、清き乙女~

「この社には、これから新しい神が降臨する。
月読命、だ」

「「月読命!?」」


皐月以外の全員が叫んだ。

高位に名を連ねる神がこの場に降臨するなど、信じられない。

しかし、皐月は自信のある表情だ。


「おい、緋月」

「……言われなくともわかっている」


皐月が誰かに声をかける。

すると、開かずの間の中心に、淡い光を帯びた男が現れる。


「私が今日からこの土地を収める。
そして、葵は巫女の役職をとく」

「仰せのままに……」


村人達は再び頭を下げて、そう告げる。

役職をとく。

それは、葵が自由になれる瞬間。

やっと、解放される。

やっと、幸せを求める事が出来る。


「葵」

「はい」

「お前に言わなければならない事がある」


皐月は葵を放し、真っ直ぐに見つめる。

葵はそんな皐月を、ゆっくりと見上げた。


「私は新しい土地を任されることになった」


真剣な皐月の表情。

しかし、それはふいに笑みに崩れる。


「私の妻として、共に来てくれるか?」


それは、皐月の未来を約束する告白。

信じられない。

まさか、そんな言葉をもらえるなんて思ってなかった。


「私で、いいんですか……?」

「お前でなければ、こんな言葉は言わん」


皐月は葵にきっぱりと告げる。

葵は涙が溢れる瞳を細め、真っ赤な顔を皐月に向けた。


「はい……皐月様……」


そう告げると、皐月は再び葵を抱きしめる。

温かな皐月の腕の中。

葵はそれに浸りながら、そっと瞳を閉じた。