龍の神に愛されて~龍神様が溺愛するのは、清き乙女~

「遅くなってすまない……」

「皐月様……」


そんなことは、もうどうだっていい。

来てくれただけで幸せだ。


「葵、お前に嬉しい知らせがある」

「嬉しい、知らせ……?」


葵は皐月に抱きしめられたままでそう聞き返した。

「あぁ、もうお前は巫女でなくていい。
この村も、お前も、繧霞から解放されたんだ」

「え……?」

「お前はもう、独りで苦しまなくていいんだ」


耳元で囁く皐月。

その言葉に、葵は声も出ない。

解放された……?

この、残酷な宿命から……?


「私……」


訳もわからず、そう呟く。

そんな抱き合う二人の前に老婆が歩み寄り、首を傾げた。


「一体、どういう事ですか……?」

「この土地に降り注ぐ天災など、初めから存在しない。
繧霞は、ただ無意味に巫女の魂を貪っていたのだ」

「では、私達は……」

ありもしない天災に怯え、巫女を犠牲にしてきただけなのか。


「そんな……私達はなんということを……っ!」


老婆は慌ててその場に土下座する。

それを見ていた村人達も、老婆と同様にその場で土下座し始めた。


「申し訳ありません、巫女姫様……っ!」

「……あ……」


こんな時、どう答えればいいのだろう。

こんな状況は初めてで、戸惑ってしまう。

葵は助けを求めるように皐月を見上げる。

その視線に気づいた皐月はひとつ頷いて、村人達を見た。


「なら、ひとつだけ提案がある」

「提案、ですか?」


顔を上げ、老婆が聞き返す。

そんな老婆に、皐月は頷いた。