龍の神に愛されて~龍神様が溺愛するのは、清き乙女~

「答えて下さい、巫女姫様」


村人の一歩前に踏み出した老婆が言った。

葵は一度目を閉じて深呼吸をする。

落ち着け。

きっと、大丈夫。


「私は、とある方と逢瀬を重ねていました」


村人達は静かに告げる葵の言葉に耳を傾ける。

隣にいる、絢嶺も同様だ。


「たった数日。
それでも、村を危険にさらしたも同然」


下手をすれば、村が天災に巻き込まれてしまう。

それは、十分わかっていた。


「でも、すごく楽しかった……。
初めて、普通の女でいられた時間だったから……」


そう、楽しかった。

普通の女として、皐月と触れあえた数日が。

羨ましかった。

同年代の女達が。

普通に恋をして、大切な人と祝言を挙げていくのが。

どうして、巫女だったのだろう。

普通の女だったら、同じように未来を紡げたのに。


「どうして、巫女は幸せになったらいけないの……?」


幸せになりたい。

その言葉は最後まで声にはならなかった。

かわりに、大粒の涙が溢れ出す。

きちんと話すまでは泣かないと決めていたのに。

溢れ出す涙は止められない。


「葵……」


そんな葵に、絢嶺が手を伸ばす。

その時だった。


「葵っ!!」

入り口にいる村人達を掻き分けて現れたのは、今一番会いたい相手。


「皐月様……っ!」


葵は皐月に手を伸ばす。

そして、走り寄った皐月は葵のその手を引き寄せ、抱きしめた。