ある日、父はリビングに家族を集合させた。
ゲッソリ痩せ疲れ果てた父は、どこに視点を合わせているのかわからない濁った瞳で宙を眺めていた。
父「会社が倒産した」
ポツリと出した声は、雨の振り始めの最初の1粒みたいな冷たさと絶望感を感じさせる。
ついにこの日が。それが、初めの素直な感想だった
母は直ぐに、前よりもシワの増えた顔で「引っ越すよ」と言った
華「どこに?」
「……」母は、何も答えない。こっちを見もしない
華「みんな一緒に?」
母「…いいから、早く必要な物をまとめなさい」
ランドセルに教科書や必要な物を詰めて、ハンドバッグには人形と洋服を詰めた
まだまだ持っていきたいものはたくさん、たくさん…沢山あった
泣きながら連れていけない人形にごめんねって謝った