母「自己破産?!有り得ない。今更この生活から貧乏暮らしなんて出来る訳ないでしょう」
父「…でももう限界だ…苦しい生活になると思うが、一緒について来てくれないか?」
母「…馬鹿じゃないの?アパートに引っ越すの?車は軽に乗り換え?…今更貧乏生活なんて近所の笑い者よ。あんなに良い所に暮らしてたのに。って、いいネタじゃない!!そんな恥ずかしい思いなんて…絶対にしたくない」
父「そんなこと言ったって…
遠くに引っ越すのは、秋良と華那子が友達と離れてしまうし…もう一度、この土地でやり直したいんだよ」
母「なら、会社が潰れない様になんとかしてよ!!」
父「言われなくてもやってるよ!!」
意味までは理解出来なくとも、二人がピリピリしているのは嫌ってほど伝わってきた。
刃物の様に鋭い言葉達が、母と父を切り刻んでいく。オレンジ色に漏れる光を切り刻んでいく。
両耳を塞ぎたくなった。ドラマとか漫画でよく見たことある、両耳塞いだって、結局聞こえてくるのに。
でも今ならわかる。塞ぎたい、少しでいい。ほんの少しでもいいから、この耳の中に侵入してくる不愉快なノイズを終わらせたい
母は次第に、普段の生活でもイライラを表に出すようになった。と思ったら、今度は話し声も届いていないほど酷く落ち込んだりしている
毎日、母は情緒不安定を繰り返していた

