甘美なキョウダイ






「本当、よく釘なんて刺そうと思えたものよ」



つい口から零れた毒に美優は自分で顔を顰め、後ろの悠斗の背に持たれた。



暖かい悠斗の熱にまだ腹の底で溜まっている毒が薄れていくような気がして目を閉じた。



悠斗はそんな美優の言葉に何か返すことはなく片腕を後ろから抱きしめるように、美優の胸に手を回して自分と密着させる。



あの人にも邪魔されたくない生活があるように、私にも邪魔されたくない生活がある。とそう思って美優はグリグリと悠斗の鎖骨辺りに頭を押し付けた。




「……美優いたい」



頭上からクスクスと笑う悠斗の言葉に少しだけ頬を持ち上げた美優は夕食会の時間になるまで、そうやって不安を潰していった。





No side*END