「河村先輩の部屋は近いんですか?」

「まぁ近いっていうか、ここの隣の308号室だし」


…あ、そんなに近かったんだ。



寮の出入口へ行くと、さっきよりも雨は弱まっていた。

これなら帰れそう。


あたしは、河村先輩に借りた傘を広げる。


そのとき…。


「駅まで、送って行く」

振り返ると、中津先輩が外靴に履き替えようとしていた。


奇跡かと思った。