朝。



昨日はよく眠れた。



兄貴が死んだ日の夢も見なかった。



俺は初めて




兄貴の死と向き合えたのかもしれない。



俺は心の中でカイトに感謝した。



なぜって?



うまく言葉で説明出来ないが



昨日俺の中に生まれた感情がそう感じさせたから。



もう俺は



一人ではない。






等身大の鏡の前に立つ。


履き慣れた洗いざらしのブルージーンズに履き替えた後


真っ白な生地に赤と黒のペンキをブラシで飛ばした自作のロンTに袖を通し


コットン素材の薄手のグレーパーカーを一枚羽織って


家を出た。



今日会う人とは事前に昨日連絡をとってある。



誰だと思う?



そう



俺の愛すべき永遠の先輩



猪瀬トオル