「翔の心残りは、その子の事?」


「いや、違う」


即答する翔にあたしは拍子抜けしてしまいそうになった。


じゃぁ、どうしてあたしをここへ連れてきて、そんな話をしたんだろう。


「ただ、1つ、チホに聞きたいことがあったんだ」


「聞きたいこと?」


「あぁ。明日、この桜に花を咲かせることができるかどうかだ」


そう言われて、あたしは翔を見た。


翔は相変わらず桜の葉を見つめている。


残念ながらあたしは花咲かじぃさんじゃないから、それは無理なお願いだった。


でも、翔が持っているイメージでならいくらでも咲かせることができるだろう。


「花が咲くかどうかは、明日の翔にかかってるよ」


あたしがそう言うと、翔は「そうか」と、小さな声で呟いたのだった。