チョークを手に持ち「武田、なんだ?」と聞いてくる。


「教科書50ページの感じの読み方はなんですか?」


そう質問すると、今まで何もなかった机の上に教科書とノートが現れた。


窓から風が吹き込むと、パラパラとめくれている。


いつの間にか教室内には30人ほどの生徒たちが座っていて、みんな有馬の授業を聞いていた。


「あぁ、これか、この漢字の読み方はな……」


カッカッカッとチョークの軽快な音が教室内に響く。


教師志望だということで、さすがに有馬の教え方は上手だった。


黒板に漢字を書いていき、生徒の質問に答え、問題を出題する。


有馬は終始目を輝かせていた。


ふと、イメージの生徒の中に大空にそっくりな男子生徒の姿を見つけた。


大空に似た生徒はロクに授業を聞かず、隣の生徒をおしゃべりに夢中だ。


それを見たあたしは思わず笑ってしまった。


イメージの中でも、大空らしい行動だ。


「こらそこ! ちゃんと授業を聞け!」


有馬に怒られた大空は首をすぼめて苦笑いを浮かべている。


教室中が賑やかな笑い声に包まれた……。