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下から見えていた高校はそれほど遠くない場所に建っているように見えていたが、実際そこまで歩こうと思ったら随分と遠かった。


あたしがキャリーケースを持っていることもあるし、ずっと登り坂だと言う事もあって、半分ほど登ったところで息が切れてしまった。


「チホは本当に運動神経がないな」


歩道で一休みしていると唯人が呆れたようにそう言って来た。


「仕方がないでしょ。体育の授業とか受けてないし」


仏頂面をしてそう返事をすると、唯人が「授業を受けてない?」と、聞いて来た。


その質問にあ、余計なこと言っちゃったかも。


と思っても、もう遅い。


「なんで?」


そう聞かれてあたしは視線を森の中へと移動させた。


森に生えている木はすべて竹のようで、竹丘男子高校という名前がしっくりくる。


「この竹を使って町おこしをしているんでしょ? 町のいろんな場所に竹を使ったオモチャのお店があったよね」


あたしはここへ来る前の道のりを思い出しながらそう言った。


「あぁ、そうだ。この森の竹は学校の授業でも使われてるんだ」


「へぇ! 唯人たちも、竹で何か作ったりするの?」


「もちろんだ。この町で働いている人のほとんどが竹にちなんだ職業をしているんだ。だから学生時代から学校で習うんだ」


「唯人が作った竹細工、見て見たい!」


あたしはそう言い、勢いよく立ち上がった。


「なんだよ、疲れたんじゃなかったのか?」


「疲れてるけど大丈夫!」


あたしはそう言い唯人より先に歩き出した。


「全く、調子のいいやつだな」


唯人がブツブツと文句を言っても、あたしは聞こえないふりをしたのだった。