あたしだって好きで胸が大きくなっているわけじゃない。


あんたたちくらい小さくたって別にかまわなかった。


こんなに大きくたって重たいだけだし、気持ち悪い大人たちがジロジロ見て来るし。


そう思いながら、あたしは強く左右に首を振った。


「もう、この考えはやめやめ!」


自分にそう言い聞かせて、大股に部屋を出た。


ドタドタとわざと足音を響かせて一階へと下りて行く。


今日は両親もおばぁちゃんもおじぃちゃんも家にいない。


夏休み3日目を思う存分だらける事ができる日なんだ。


あたしは真っ直ぐ台所へと進み、冷凍庫を開けた。


昨日買ってきておいたアイスがキンキンに冷えている。


学校では今日も就職説明会が開かれているらしいけれど、行く気はなかった。


だって、あたしの将来は家業を継ぐことだもん。


こうやって高校3年生の夏休みをのんびりと過ごしていられるのも、この家に生まれたからだ。


そうだよ、そうやって考えるとこの家の1人娘に産れてよかったじゃん。


就職も進学も考えなくていい。


あたしをイジメていたあいつらは、きっと今頃ヒーヒー言いながら勉強したり、面接の練習をしていることだろう。


そう思うと少しだけ心が晴れて、あたしは鼻歌を歌いながら自室へと戻った。


涼しい部屋でアイスを食べる。


外は相変わらず暑苦しいセミの鳴き声が聞こえてきているけれど、そんな熱さに悩まされることもない。


あたしは快適だ。