それらはここに来たときには見えていなかったものたちで、あたしは早足に廊下を進んでいった。


校舎の隅にあるトイレは木製のドアで、開けたり閉じたりするたびにギィギィと嫌な音を立てた。


もう少しで錆びた蝶つがいが外れてしまいそうだ。


木の板に穴があいたようなぼっとん便所で用を足して出て来ると、和が待っていた。


「なに?」


「そろそろいいんじゃないか?」


その言葉の意味が何を差しているのか、痛いくらいに理解していた。


あたしは大きく息を吸い込む。


「唯人は外にいる」


和がそう言い、グラウンドを指さした。


窓からグラウンドを見下ろすと、桜の木の下に唯人が立っているのが見えた。


「……行こう」


あたしは自分自身に言い聞かせるようにそう呟き、和と2人でグラウンドへと向かったのだった。