だけど、住田唯人の事をほっておくわけにはいかなかった。


電話越しに住田唯人から聞いた話を説明すると、お父さんは時折合図を打ちながら「困ったな、こっちはいつ帰れるかわからない状況だ」と、言った。


「そうなんだ? それならやっぱり断っておくね」


そう言って電話を切ろうとしたのだが……。


「待て、チホ!」


電話口のお父さんにそう言われ、慌てて受話器を耳に戻した。


「なに?」


「その住田君とやらはチホに仕事の依頼に来たんだろ? それなら行ってみたらどうだ?」


聞こえてきた言葉にあたしは目を見開いた。


「何言ってるのお父さん! あたしはまだ見習いなんだよ?」


「そんなのわかってる。でも住田君とやらは健康的で元気な霊だと言っていたんだろ? それならきっと、心残りを果たせば自然に消えて行くだろう。


丁度夏休み中で時間もあるんだ、チャレンジしてみたらどうだ?」


そう言うお父さんの声はどんどん明るくなっている。


まるで『行って来い』と言われているような気分だ。


あたしは何も言えなくなってしまった。


「除霊は数日間かかる場合もある。霊の数は教えてもらったか? 1体だけじゃない場合もあるから、数日分の着替えを用意して……」


電話の向こうでどんどん話を進めていくお父さんに、あたしは大きなため息を吐き出したのだった。