学校へいけばイジメられて、唯人たちみたいに中のいい子なんて1人もできなくて。


ただただ時間を消費して我慢するだけの場所でしかなかったから。


「唯人はあたしに色々な事を教えてくれたね」


「なんのことだ?」


「友達の大切さや自分の気持ちを伝える大切さ」


だけどそれだけじゃない。


こうして男子と一緒に会話をしても恐怖を抱かない。


むしろ穏やかな気持ちになっているあたし。


こんなあたし、小学校以来だった。


「なんか、いろんな気持ちを思い出させてくれた」


「そうか?」


唯人は自覚していないようで、さっきから首を傾げている。


「2人でなにしてんだよ」


そんな声がして振り向くと、和が立っていた。


いつの間にか外へ出かけていたようで、その手にはコンビニの袋が握られていた。


「買い物に行ってくれたの?」


「あぁ。きっと明日で最後になるからな。記念にケーキ」


そう言うと、和は袋の中から2つ入りのショートケーキを取り出して見せた。


「うそ、わぁ! 嬉しい!」


ケーキに飛びつきそうになるあたしを、和が止めた。


「明日、仕事が全部終わってから食べろよ」


「えぇ? 今日じゃないの?」


「記念にって言っただろうが」


呆れ顔をする和を、唯人がジッと睨み付けていることに、あたしは気が付かなかったのだった。