「このくらいの鍵ならなんとかなるかも」


あたしはそう言い、入って最初に調べた机へと向かって引き出しを開けた。


ここは女性の先生の机だったようで、ヘアピンが入っていたのだ。


それを一本拝借したあたしは、すぐに和の元へと戻って行った。


ピッキングなんてしたことはないけれど、鍵穴にピンを付き刺してでたらめに動かす。


「そんなので開くのかよ」


唯人が呆れたような声を出した。


その時だった。


カチャッと小さく音がして、あたしは手を止めた。


「マジかよ」


和がそう言い、笑い声を上げる。


適当になっていただけで開くなんて思っていなくて、あたしも瞬きを繰り返した。


「早く探そう」


和がそう言い、引き出しを開けた。


中には難波先生と思われる先生の家族写真や、小銭が入っている。


貴重品という感じではないものを乱暴に机の上に出していく。


沢山の手紙は奥さんとの文通のようだ。


ここには家族との思いでをたっぷりと収納していたようで……鍵はどこにもなかった。


「ないな……」


和がそう言い、ため息を吐き出した。


「さっきの、ピンでガチャガチャさせて開ける事はできないのか?」


唯人にそう言われて、あたしは手に持っていたヘアピンを見下ろした。