「ちょっと、勝手に開けていいの!?」


いくら夏休み中でも、先生たちは時々出勤しに来ているはずだ。


個人情報を勝手に見ることになってしまう。


「あの部屋は鍵だけじゃなく、お札も貼られているんだろう? それなら、霊の存在に気が付いた先生がいるってことだ。


裕のように自分の霊感を他者に知られたくなければ、誰にも言わず、こっそり鍵をかけた可能性だってある。だから、鍵置き場に南京錠の鍵がないんだ」


「それはそうだろうけれど……」


和の言っていることが正しかったので、反論もできないままあたしは近くの机を調べ始めた。


自分が先生の立場なら机に置きっぱなしにはしないと思う。


こうやって生徒たちの目に触れる可能性がある場所には置かない。


自分の家に持って帰るか、もしくは自分しか知らない場所に隠しておくだろう。


「そういえば、難波先生には霊感があるって誰かが言ってたな」


思い出したように唯人がそう言った。


「え?」


あたしと和は手を止めて唯人を見る。


「そこの席の難波先生。50代の男の先生なんだ」


唯人が指さした一番奥の机に向かう。


役職が少し上なのか、一回り大きな机だ。


「ここ、鍵がかかってる」


右手の引き出しを開けようとした和がそう言った。