そう言いながらあたしの隣に立った。


「あたしはマヤじゃ……」


『マヤ』じゃない。


そう言いかけて、やめた。


『マヤ』でも『チホ』でも、いいや。


唯人が『マヤ』と呼んだおかげで、あたしは自分の心の中をさらけ出すことができたんだから。


「夜は嫌いじゃないよ」


代わりに、そう返事をした。


「悪霊の力が強くなるのにか?」


「悪霊なんて、そうそういるものじゃないもん」


「そっか。そうだよな」


唯人はそう言い、笑った。


その辺を漂っている霊たちは、みんなのように心残りがある霊たちだ。


その中で悪霊化までするのはほんの一握り。


霊たちはイメージで自分の心残りを解消したり、時にはあたしのような霊媒師を頼りに心残りを解消する。