言いたいことを口にすると嫌われてしまう。


教室でイジメられるたびに、勝手にそう思い込んでしまっていた。


その場にいるだけで罵倒されるあたしが、意見なんてしちゃいけない。


そう思って、言葉をすべて飲み込んできた。


時々出て来る涙は、そんな言葉たちをため込んでいた心の悲鳴だ。


夜になり、あたしは1人で桜の木の下に立っていた。


見上げると青い葉と、星が見える。


あの開かずの教室の中にはどんな悪霊がいるんだろうか。


その悪霊と裕との関係は一体なんなのか。


明日になれば、きっとすべてが明らかになるだろう。


あたしは胸の前で手を握りしめた。


怖くないと言えばウソになる。


今まで悪霊を相手にしたことなんて、1度もない。


昼間悪霊と対峙したって、あたしが勝てる保障なんてどこにもなかった。


「眠れないのか?」


その声に振り返ると、唯人が立っていた。


とっさに視線をそらしそうになり、なんとか唯人を見返した。


「マヤは夜がこわかったんだな」