「怖いかもしれないけれど、少しずつ少しずつ、言ってくれればいいんだよ」


唯人の言葉にあたしは自分の頭の中が真っ白になっていくようだった。


唯人は不思議な人だ。


あたしのすべてを知っているかのように見透かして来る。


決して手を差し伸べたりはしないのに、グングン前に進ませてくれる。


あたしが自分の足で前へ進めるように、言葉巧みに誘導してくれている。


「俺も……頑張るから」


そんな声が聞こえてきて、あたしは裕を見た。


裕の体は更に濃いモヤで包み込まれはじめている。


だけど、その奥の裕の表情は明るく、そして笑っていたのだった。