そう返事をされて一瞬考えたあたしは、次の瞬間顔が燃えるように熱くなっていた。


「俺はチホさんに除霊を頼みに来たんです」


住田唯人はさっきまでと何も変わらない口調でそう言い、爽やかな笑顔を浮かべている。


「なっなっ……」


口をパクパクさせるだけで言葉が出て来ない。


たしかに住田唯人の言う通り、交際を申し込まれたわけではなかった。


そもそも『好き』にはいろいろな意味がある。


交際を考えている『好き』は『love』だが、そうじゃない『好き』は『like』だ。


その差は歴然としている。 


それなのに早とちりをしてしまって、しかも勝手に交際を断るとかどれだけ自意識過剰なんだ。


あぁ、日本語は難しいなぁ。


自分自身が恥ずかしくて思わずうつむいてしまった。


「お願いできませんか?」


彼の手があたしの手に触れそうなほど近くに置かれる。


あたしはすぐに自分の手を膝の上に引っ込めた。


恥ずかしさとドキドキで死んでしまいそうだ。


「れ、霊の種類にもよります」


あたしは左右に視線を泳がせながらそう言った。


「種類、ですか?」


「はい。霊がこの世に止まっているのは未練があるからです。それを晴らせば簡単に成仏してくれるのか、それともすでに悪霊化しているのか。悪霊化していた場合は未熟なあたしに除霊はできません」