「まだ眠いんでしょ? 1人で行けるからいいってば」


「よくない」


和はそう言うと、あたしを追い越して歩き出した。


寝起きのせいか、それとも他に理由でもあるのか、なんだかとても怒っているように見えるのは、きっと気のせいじゃない。


「なに怒ってるの?」


あたしは和の後ろを歩きながらそう聞いた。


「別に、怒ってなんかない」


冷たくそう言う和にあたしはふくれっ面をした。


外へ出ると朝の冷たい空気に身を震わせた。


「ほら見ろ、寒いんだろ」


和が呆れたような口調になってそう言った。


「……寒い」


「だから俺が行くって言ったんだ」


「それならそうと言ってくれればいいのに」


言葉足らずな和の優しさにあたしはそっぽを向いた。


「……シーツありがとう」


和がお礼の言葉を言うとは思っていなかったあたしは驚いて和を見た。


和は顔を真っ赤にして、この場から逃げるように自転車に乗ってグラウンドを走り去って行ったのだった。