「本当にありがとう。感謝してる」


「別に、あたしは何も……」


「一緒に遊んでくれた」


「そんなこと……」


「知ってる? 幽霊の俺と遊んでくれる生きた人間なんて、いないんだぜ?」


そう言われて、あたしは翔を見上げた。


翔はあたしの頭に手を乗せたまま、ニカッと笑う。


この笑顔があと数時間後には消えているのかと思うと、翔を見つめていることができなくなった。


「霊媒師も幽霊もみんな同じ、人間だから」


あたしは呟くようにそう言った。


翔がフッと息を抜くように笑う声が聞こえて来た。


気が付けば、教室の外は真っ暗になっていた。


「花火をしよう、チホ」


「……そうだね」


翔が消えるのは、もう時間の問題だった。