山から下りて来ると翔は間髪入れずに「花火がしたい!」と、言い始めた。


「花火、いいな!」


裕が便乗して手を叩く。


「花火をするのはかまわないけど、夜まで待たないとできないよ?」


明るい中で花火をしてもいいけれど、それじゃ感動にかけてしまうだろう。


「先に花火を買っておいて、夜になるまで他の心残りを解消していけばいい」


「他の心残りってなんだっけ?」


「木登りをすること、虹を見る事、もっと相撲がしたい、勉強ももう少し真面目にやってればよかったと思ってるし、あとは……」


次から次へと出て来る心残りに目が回りそうになってしまう。


「わ、わかった。あたしは花火を買って来るから、翔は裕たちと木登りをしてて」


「それなら一緒に買い物に行く。花火は自分で選びたい」


「じゃぁ俺も一緒に行く」


裕がすぐにそう言った。


結局みんなで一緒に行くことになった。


あたしは校舎裏に置いておいた自転車を再び取り出して、坂道を下って行ったのだった。