イジメられる前のあたしって、どんな子だったっけ?


何が好きで、何に夢中になっていたっけ?


思い出そうとしても、もう随分と昔のこと過ぎて思い出す事もできなかった。


唯人の顔を見る事もできずその場で茫然としていると、「泳ごう」と、手を差し出された。


顔を上げるとそこには和が立っている。


その後ろには翔と裕の姿も。


「チホ。チホは川が好きだよな」


唯人がそう言った。


水面へ視線を向けると、穏やかな流れに合わせて太陽の光が輝いている。


それはずっと見ていても飽きないと思えるほど綺麗な光景だった。


あたしの街にはない光景。


「……うん」


あたしは自然と頷いていた。


あたしは川が好き。


水面から移動させて和の顔を見ると、和は気まずそうに手をひっこめた。


「誘ってくれてありがとう、和」


あたしはそう言い、自分で立ち上がった。


それにつられるようにして唯人も立ち上がる。