「翔の未練を簡潔言うと何になるんだよ?」


見かねたように唯人がそう言って来た。


翔はクルリを振り向いて、笑顔を浮かべる。


「俺は『生きているという実感がほしい』」


翔の言葉がなぜかあたしの心に衝撃を与えた。


まるで電気ショックで再び生命を与えられたような感覚。


あたし、死んでなんかないのにな。


「ほら、俺達って突然死んだだろ? だから頭がなかなかついて行かなくて、とにかく俺は『生きていたい』んだ。だけどそれは無理だろ? もう死んでるんだから。


それならせめて『生きているという実感』を得られれば、満足できる気がするんだ」


「だから、翔は自分の好きなこと、やりたいことを全部書き出したわけか」


唯人はそう言い、唸り声を上げた。


「でもこれ全部やってたら、1日じゃ成仏できないぞ?」


翔も同じ事を考えていたようだ。


「そっか、さすがに欲張りすぎたかなぁ」


翔はそう言い、黒板へ向き直った。


そして手に黒板消しを持つ。