「ちょっと、なんなのよこれは」


あたしは翔の横に立ってそう言った。


「俺の心残りだ」


「心残りって……チョコレートを食べる事が?」


「そうだ。なんだよ、バカにしたような顔しやがって」


「だって、大空や有馬を見てたら心残りがどんなものなのか、だいたいわかるでしょ?」


そう聞くと、翔はムッとした表情であたしを見下ろして来た。


体格がいいから、それだけで威圧感がある。


「チホ、お前は霊媒師のくせに霊の心残りに大小の差をつける気か?」


「そ、そういうわけじゃないけど……」


「好きな奴に告白をするのも、夢を叶えるのも、チョコレートを食べるもの、同じだろ?」


そう聞かれると反論はできなかった。


人の未練は人の数だけ存在している。


それがチョコレートが食べたい。


という未練であっても不思議ではないんだ。


「でも、この数は多すぎない?」


黒板一杯の文字を見て、あたしはそう言った。


「仕方がないだろう、俺の未練は沢山あるんだから」


そう言い、まだ書きつづける翔。


1日で除霊が終るかどうかが怪しくなってきた。