私の言葉にフって笑った澤井は「さて」と立ち上がった。


「転校祝い、ということで私が朝食を作りましょう」

「え? いいわよそんなの。自分でできるわ」

「今日ぐらいは作りますよ」


 そう言いつつ、上着を脱いで代わりにエプロンを着た澤井は、なんかもうこ慣れてて……『イクメン』って感じ。
 まだまだ20歳だけれど。


 さて、そろそろ着替えようかしら。
 そう思ってよっこらせとソファを立った。


「……あ、そうだ」


 その時、澤井が小さく声をあげた。


「俺のイチバンもアオさまですよ。これからも、ずっと」


 サラっと言って、浮かべた笑みはとっても余裕そう。……出会った頃のシャイさは、一体どこへ行ったのか、あの頃じゃ考えられないくらい……。


「……そんなの、言われなくてもわかってるわ」

「言葉にしなきゃ伝わらないことだってありますからね」


 ニコニコとして、フライパンにジュっ! と卵を落とした。